今だからこそ、自分自身を見つめ直す➀

ある時、山火事が起きました。火はどんどん広がり、燃えさかる勢いは止まるどころか、さらに激しくなっています。森の住人たちは、つぎつぎと避難していますが、中には火や煙に巻かれて、命をおとすことさえありました。そこに、一羽の小鳥が山火事に立ち向かって行きました。

自ら小さな体を湖に浸け、そのまま森に戻り、体や羽についた水をぱたぱたと落としました。ほんのわずかの水です。かすかにジジッと音がしたようですが、火の勢いは止まりません。しかし、その小鳥は何度も何度も自らの体を使って、ささやかな消火活動にいそしみました。そんな姿を見たほかの鳥たちは、その小鳥を馬鹿にして言いました。「そんなわずかな水で火が消えるわけはない」「いずれ焼け死んでしまうぞ!」

しかし、小鳥は、何度も何度も湖に飛び込んでは、燃えさかる炎に向かって行きました。しばらくすると、別の小鳥が同じように自らの体を湖に浸け、同じように火を消すべく炎に飛び込んでいきました。そして、そんな鳥が2羽、3羽、そして10羽、20羽と、どんどん増えました。端から見ると、小鳥の集団がいっせいに湖に飛び込み、自らを水でくるみ、そして炎に突進しているように見えました。

山火事は、何日かして消えましたが、自然に消えたのか、小鳥たちの努力によって消えたのかは分かりません。
いずれにせよ、森にはまた平和が戻ってきたのです。これは、山火事に小鳥が立ち向かい、その小さな体で命がけの消火活動をしたというお話です。

一羽の小鳥の行動が、多くの鳥たちの心を揺り動かし、結果的には大きなうねりとなったのです。この話を聞いて、「命知らずでお人好しな馬鹿な奴だ」と言い切れるでしょうか。確かに、世の中の人全員が、この小鳥のような行動をしなければいけない、などとは言えません。世の中には、そんな勇気ある行動をとれる人間が必要であり、またいつの世にも、そうした人たちが現れ、その人たちによってまた、人々に勇気と希望を与えてきたのです。(明日に続く)

Posted by mzc